2021年10月 森のたより
秋が次第に深まっていきます。当たり前のように毎日を園で過ごしている子どもたちの保育・教育システムについて、改めて説明します。
先ずは乳児。0歳から2歳のクラスは育児担当制というシステムで毎日を過ごしています。
育児担当制システムの歴史はそんなに古くありません。第二次大戦のヨーロッパでは市内戦が多くあり、戦争孤児が各地に溢れました。戦後、その子たちは政府の孤児収容施設で育てられましたが、情緒が不安定でその育ちに多くの問題が生じました。フランスがヨーロッパの様々な国の孤児の育ちを調査したところ、ハンガリーの「ローツィ乳児院」で育った孤児たちにはホスピタリズム(情緒的障害)が現れていませんでした。その要因としてローツィ乳児院での育児法が「こども集団対養育者集団」という構図ではなく、一人ひとりに寄り添う育児方法がとられていたのです。これが育児担当制保育の出発点となり、フランスなどで形作られました。
さて、本園の0歳の「つくし」では現在12人のこどもたちがいます。対して大人は4人の担任と1人のフリーが部屋にいます。12人のこどもを5人が見ている時間(子ども集団対大人集団)は遊びの時間です。食事、排泄、睡眠など1対1の育児の部分を担当するのは担当する一人の保育者となります。一人の保育者が3人を担当しますが、こどもの生活時間に合わせて担当を決めていますから、一人ひとりが重なることなく、3対1でありながら、こどもには1対1で接することになります。
1歳児の「たんぽぽ」ではどうでしょう。本園ではこども20人のクラスに5人の大人がいます。こども20人対大人5人という関係では、一人ひとりの育ちを見守ることは大変難しいことです。
育児担当制でない1歳児の食事のシーンをイメージしてみましょう。20人の子どもたちが一斉に食事を始めたら、4人の大人がよりそうことができるこどもは何人でしょうか。(国の規定に沿えば1歳児6人に保育者は1人ですから3.6人が適正配置です)1歳児クラスには4月に2歳の誕生を迎えた子も翌年の3月に2歳になる子もいます。このような月齢差、又それぞれの育ちの差が混在しているなかで、一人ひとりの適切な食事時の学びを確保することはとてもたいへんなことではないでしょうか。